見出し画像

徹底的に省エネを追求した、環境にも働く人にも優しいオフィスとは

今年の夏は例年以上に暑い日々が続き、猛暑に伴う「電力需要の逼迫ひっぱく」というワードも聞く機会が増えました。
電力不足は夏だけでなく、冬も懸念されますが、これを解消する抜本的な解決策は立っていません。

実は私たちパナソニックは快適に働ける環境を維持ながら、広島県のオフィスビルでなんと毎年ドラム缶約1000本分のエネルギー削減を実現。
しかも、ウイズコロナの時代に合わせ、安心・安全な職場環境の構築も並行して行っている最新施設なのです。

オフィスこそ無駄なエネルギー消費が多い?!

ところで、オフィスの消費電力量って結構大きいことを知っていましたか? 

国内全体のエネルギー消費量は減少傾向にあるものの、それは産業部門の省エネのおかげ。家庭部門と業務他部門に大きな減少はなく、特に業務他部門はここ10年ほど横ばいを続けているそう。(参考:資源エネルギー庁の「エネルギー白書2022」

みなさんもご自身のオフィスを想像してみてください。
エアコン、照明、コピー機、1人1台のパソコン、通信機器、サーバー、給湯器・・・オフィスの中はエネルギーを消費する機器だらけ。
特にオフィス業務の自動化が進んだことで電源入れっぱなしのIT機器が増え、サーバーや通信機器を収めた部屋は熱暴走しないように一年中冷房が入っていることも。

とはいえ地球環境や国内エネルギー事情を鑑み、企業の社会的責任も考えると、なんとしてでもエネルギーの消費は減らしていかなければなりません!

最近は在宅勤務者も増え、オフィスに出社する社員数も減少したのに、いまだに煌々と照らされるオフィスやエレベーターホール、オフィス全体に行き渡る冷暖房。まだまだ無駄を省けるところは残されているはず。

考えるだけでは何も変わらない。
私たちは継続的にオフィスの省エネ化に取り組んでいます。

毎年ドラム缶約1000本分のエネルギー削減

その一例として、パナソニック エレクトリックワークス社が保有する広島中町ビル(広島県広島市中区)の取り組みをご紹介。
このビル、2021年度省エネ大賞省エネ事例部門で省エネルギーセンター会長賞を受賞した大注目すべきビルなのです。

このビルは2009年から本格的な省エネ化を推進。そしてついに2020年度のエネルギー消費量は2008年度に比べて約半減。削減量は原油で換算すると19万7000kL。これはドラム缶985本分、一般的な小学校の25メートルプールの水量の半分近くの量となります。

なぜこれだけの量を毎年削減できるようになったのか。
理由は大きく3つ。

①    省エネ性の高い機器への更新
②    従業員全員による地道な努力
③    最新技術を駆使したシステムの3つの取り組み

①    省エネ性の高い機器への更新
1996年にガスと電気のベストミックスを意識した熱源機器を導入するなど、省エネビルとして設計され竣工した広島中町ビル。
2004年にはBEMS(ビルエネルギー管理システム)を導入し、より効率的なエネルギーの運用を測っています。

転機は竣工から13年経った2009年。空調設備の老朽化に伴う機器更新に合わせ、ビル運用者が一体となって本格的により省エネに取り組んでいくことを決めたタイミングです。
ガス・電気ベストミックスの空調熱源機器をオール電化に改修。
電気使用量は1.2倍に増えましたが、ガス使用量はゼロに、ガス熱源機用の冷却塔が不要になったので使用水量も2割削減に成功!

2009年に実施した空調熱源のオール電化により、原油換算で24.2kLの削減効果あり

照明機器ももちろんLED化。
天井照明だけでなく非常時の誘導灯など多種多様な照明機器が9フロアで1600台もあるため一度にはLED化できず、2011年度から2019年度まで約9年かけて順次対応してきました。年間消費電力は57%も削減。

9年かけて全館LED化を実施。省エネ効果がもっとも大きい取り組みでした

②   全従業員による地道な努力
私たちはグループを挙げて「コストバスターズ活動」に取り組んでいます。企業活動の中で無駄なコストを削減して経営体質を強化しようというもので、全従業員が無駄を発見、提案・実施し、効果があればグループ全体に横展開している活動です。

広島中町ビルでのコストバスターズ活動の成果の一つが設備の運用変更による省エネです。

通信機械室内の通信機器を最新の小型機器にしたところ、発熱を抑えることができ、室温が下がり通気性も良くなったことで、通信機械室のエアコンの台数も半減。エレベーターホールにあった明るい装飾照明も不要と判断し、消灯することにしました。

通信機器室のエアコン削減、エレベーターホールの無駄な照明をカットするだけでも省エネ効果大

ビル内で働く人々の意識改革・行動変容も促すことも省エネにつながっているといいます。
離席時はパソコンのスリープモードを徹底してモニターとパソコン本体の無駄な消費電力をカットしたり、夏場のトイレ便座のヒーターオフ、クールビズ・ウォームビズの推進などを、社内報やポスター掲示、メールを通じて繰り返し全従業員に訴え続けてきました。

地道な努力なんかで大して変わらないんじゃないかと思われるかもしれませんが、合計6万4400kLの原油換算削減効果を叩き出したといいます。

ウィズコロナに向け、省エネで快適、安全なオフィス環境構築

そして迎えたコロナ禍により私生活が一変したと同じく、職場環境も新しい生活様式に対応していく必要があります。密集・密接・密閉の3密を避け、換気のよい職場環境を作っていくこと。
ただそれだけでは働きにくいオフィスになってしまう可能性もあるため、健康を守りつつも多様性と働き方改革の要素も加え、さらに省エネにもなる改修を2020年度からスタート。

③    最新技術を駆使したシステムの3つの取り組み
3密回避と働きやすさを両立するために、まずはオフィスのフリーレイアウト化を実現。
固定席に比べ、従来よりもさまざま人との会話が生まれ、また円滑なコミュニケーションが取れて仕事を効率的に進めることができます。またレイアウトフリーにすることで、気分によって席を自由に移動することも可能に。

フリーレイアウトにするのは簡単に見えてそうではありません・・・。
照明と電源コンセントをフレキシブルにする必要があります。現代の働く人たちにはコンセントと適度な照明は必要不可欠ですよね。ということで必須条件は下記3つ。

・電池残量を気にすることなく、どこでもパソコンが使える
・眩しくなく暗くもない、資料が読める適度な明かり
・人員の増減や環境の変化に応じていつでもレイアウトが簡単に変更ができる

そこで広島ビルでは既存のシステム天井を、配線ダクト取り付けボックスを組み込んだ照明器具に変更しました。照明器具の取り付け・取り外しが自由になり、オフィスレイアウトの自由度が向上し、タスク・アンビエント照明の導入が実現したのです。

【改修前】四辺がLEDロング照明で固定されていた
【改修後】2つの辺にさまざまなLED照明を自由に配置できるように

タスク・アンビエント照明とは、Task(作業)とAmbient(周囲)を組み合わせた造語。作業する場所や作業内容に合わせて必要な照明にすることを言います。

フロア全体を隅から隅まで均一に明るくするのではなく、無駄な明かりは排除して、必要な場所に必要なあかりを届けること。欧米ではよくつかわれている手法です。

広島ビルでは、あかりの色でゾーニングし、どの時間帯にどのあかりの下に従業員が集まるかを実験。
リラックスできる暖色系のカフェモード、太陽光に近いあかりのネイチャーモードでリフレッシュ、スポットライトを使ったブースモードは自分の手元が明るくなって集中できる、というように、あかりの色と種類で3つのゾーンを作ったのです。

左側がネイチャーモード、右側がカフェモード
ブースモードは手元にスポットライトが当たり、集中できます。
天井からコンセントがぶら下がりPCをつなげることも可能

従業員のネームプレートには位置情報を送信するビーコンが埋め込まれています。
天井に設置したセンサーで時間帯、季節、天候、従業員のニーズに合わせて自動的にあかりをレイアウト変更可能。また、位置情報ソリューションPOSITUS(ポジタス)では、照明のゾーニングだけでなく、働き方を可視化し、オフィスの利用効率などオフィス空間に潜む課題を浮き彫りにします。

左側が社員証のビーコンを検知するスキャナー、右がCMOS画像検知する空間環境センサー
フリーアドレス化されても常にPCなどの充電ができるよう、ポータブルバッテリーe-blockも用意

あかりで働く人の生活リズムを整える

生物時計や体内時計ともいわれるサーカディアンリズムに沿った照明の制御(調光・調色)も行っています。

始業時は若干オレンジ色に調色し、そこから徐々に昼白色へと変化すると同時に明るさが増し、夕方には再度オレンジ色の電球色へと照明を変化させています。あかりによって従業員の生活リズムを整えると同時に、無駄な光を削減して省エネにもなります。

夕方になると、照明は明るすぎない電球色に変わり、働く人々の生活リズムを整えます

窓にはレースカーテンを取り付けて外光を取り入れ、天井の明るさ検知センサーと連動して明るい日中は照明を落とすといったこともしています。外からの視線を防ぎ、太陽熱を防ぎながら明るさを確保し、無駄なエネルギーをカットして省エネ。一石三鳥ですね。

照明だけでなく、空調もセンサーを活用して自動制御しています。
天井に設置されている画像センサーは在籍人数を検知して、換気量を自動制御します。オフィスに人が多いときは換気量を多く、少ない時は換気量を抑えることで、感染症対策に対応しながら省エネも実現しています。
現在はフロア全体の制御のみですが、将来的には局所的な密集に対応できるよう、部分的な換気量の制御に加え、冷暖房も部分的な制御ができるよう検討していく考えです。


こうした地道な努力を積み重ねた結果、2020年度のエネルギー消費は2008年度比で約半減することに成功し、2021年度省エネ大賞省エネ事例部門で省エネルギーセンター会長賞を受賞。

パナソニックグループでは毎年、エネルギー使用量を前年比1%削減し続けることを目標としています。広島中町ビルも、省エネ大賞の受賞を新しいスタートラインとし、まだまだ省エネの努力を続けていきます。もちろん、他のオフィスビルや営業所、工場でも。

今回、広島中町ビルで得たオフィスビル省エネ化のノウハウはパナソニックグループ全体で共有し、グループ他社への拡大を図っていくとともに、パッケージ化して他社への販売も検討しています。

省エネ家電を開発し、快適な生活を維持しながら家庭部門のエネルギーを削減するのがパナソニックの大きな使命と思われがちですが、同時に日本経済を支える企業で働く人々の健康を守りながら、オフィスの省エネ化によって環境負荷を軽減するのも私達の役目。

30年後、50年後、100年後の未来がもっと明るくなるように。
いい今日と いい未来を、電気設備から。


この記事が参加している募集

SDGsへの向き合い方

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!