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雨にも負けず風にも負けず…。工場の電力を100%再生可能エネルギーにする挑戦

こんにちは!ウラナレ編集部です。
突然夏がやってきたような日々。と思ったら関東も梅雨入り…。

身体が気温の変化に追いついてこない方も多いのでは?
リモートワークが増えたとはいえ、毎朝着る服に悩まされますよね。半袖で過ごせる夏日が来たと思ったら、突然冷える…でもこんな風に天気に振り回されるのも悪くはない…。

実はこの天候の変化、日本の再生可能エネルギーが普及しにくい要因の一つとなっています。太陽光や風力といった一部の再生可能エネルギーは発電量が季節や天候に左右されてしまうからです。

しかし、季節や天候に左右されやすい日本でも、再生可能エネルギーについて考えないわけにはいきません。

みなさんは「RE100(アールイーひゃく)」という言葉を聞いたことはありますか?
(日々品切れ続きのあの乳酸菌飲料の名前じゃないですよ)

REは「Renewable Energy(再生可能エネルギー)」の略で、100は「100%」を表します。

RE100は2050年までに企業が自らの事業で消費する電力を、太陽光、風力、水力などの100%再生エネルギーでまかなおうという国際的な取り組み
AppleやGoogle、IKEAなどグローバル企業が加盟を発表したことで注目を浴びています。全世界で340社を超える企業が参加しており、このうちの60社以上が日本の企業となっています。

私たちパナソニックもその中の1社で、2019年8月に加盟して活動を続けています。

脱炭素社会に向けたパナソニックの大きな活動をご紹介します。

水素と太陽光を併用し、電力を100%再生可能エネルギーに

2050年までに、自社が消費する電力を100%再生エネルギーでまかなうために、2022年4月15日、RE100活動の具体例と言える新たな挑戦を発表しました。

家庭用燃料電池「エネファーム」を作っている滋賀県草津市の工場敷地に、
太陽電池+蓄電池+純水素燃料電池による電力供給の実証試験を開始したのです。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、太陽光発電は天候の影響を受けやすく夜間も発電できません。蓄電池もありますが、導入する施設のほとんどは外部からの電力供給ルートである電気系統をメインとし、太陽光と蓄電池は補助的なポジションで利用するケースがほとんどです。

パナソニックは天候の変化や昼夜に関係なく、クリーンに発電できる純水素型燃料電池を組み合わせれば、天候に依存しない電力供給が可能だと判断。自社工場で実際に設備を作って実験することに。

工場の屋上を想定した大きな実証施設「H2 KIBOU FIELD」

実験すると言っても、それなりに規模が大きく実用的でないと実証にはなりません。

そこで、燃料電池(エネファーム)を製造する草津工場の屋上に発電設備を設置・運用する想定で、工場の屋上面積とそろえた約4,000平方メートルの敷地を用意しました。
これはサッカーコート半分ほどの大きさ。なかなかの大きさですよね。ここに工場で使用する電力をすべてまかなえる発電設備を作りました。

その燃料電池工場が使用する電力は、ピークで約680kW、年間電力量は約2.7GWh。つまり、一般家庭の約900戸分に相当します。

この電力を生産する機材として用意したのは下の写真の通り。
かなり本格的な構成です。

5kW純水素型燃料電池99台(約495kW)と水素タンク(7.8万リットル)、315Wの太陽光パネル1820枚による太陽電池(約570kW)、それに余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池(容量約1.1MWh)

2021年10月に、純水素型燃料電池、水素社会へ向けた「希望」という意味が込められた「H2 KIBOU」を発売しています。今回はこのH2 KIBOUを大掛かりに導入したことから施設名も「H2 KIBOU FIELD」です。

施設には水素型燃料電池99台のうち、88台が連結されています。
2列でズラリと並んでいる場所があり、なかなかの壮観!

H2 KIBOUは土地や建物の形状に合わせた配置の容易さや、メンテナンス時に発電を止めない仕組みなどが特長。H2 KIBOU FIELDでの発電により、年間約1500トンもの二酸化炭素の排出を削減できると試算しています。

H2 KIBOU FIELDは新幹線の線路のすぐ脇にあり、車窓から見える位置になっています。
線路側から見ると、このように見えるはず。このモニターでは、太陽光と燃料電池の発電電力の合算値を表示しています。

太陽光が一切発電できない時間が一週間続いてもまかなえる

このH2 KIBOU FIELDは、2022年初頭にグループ全体で掲げた環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」の具体的なアクションの1つ。

H2 KIBOU FIELDの計画がスタートしたのは、実はコンセプトを掲げるよりも早い2020年の中頃のこと。工事も2021年12月にスタートしています。

「もともと燃料電池(エネファーム)を作っている工場で、RE100化した場合を想定してどうなるか計算したところ、工場の需要に合ったサイズの太陽電池と、約500kW程度の純水素型燃料電池を導入すれば自給自足できそうだと判明しました。今後のソリューションビジネスを考えた場合に、お客様に手触り感のある提案ができると判断して、草津の燃料電池工場で実施することになりました」

こう語るのは、H2 KIBOU FIELDの取り組みを約1年前の2021年初めに引き継いだ、スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池事業総括 兼 水素事業推進室 室長(部署・役職は発表会当時のもの)の加藤正雄です。

なぜ太陽光だけでなく、水素にも注目したのでしょうか。

「再生可能エネルギーである太陽光発電と蓄電池だけでは、天候の影響で出力が安定しません。このため、太陽光で発電できない雨の日などは、純水素型燃料電池で発電します。仮に太陽光が一切発電できない時間が一週間続いても、計算上はなんとかまかなえる見込みです」

水素を活用するには、まだまだ課題も

太陽光が一切発電できなくても水素でまかなえるのであれば、「いっそ純水素燃料電池のみで構成してしまえば安定するのではないか」と思う人もいるかもしれません。

“電力の安定”という意味ではその通りなのですが、実は水素はまだまだ割高なので、事業として行う以上、水素だけにはできないのが実情なんです。

また、今回導入した純水素燃料電池「H2 KIBOU」は「グレー水素」と呼ばれる水素を使用しています。実はこのグレー水素、化石資源から製造されているため、製造過程で二酸化炭素等の温室効果ガスを排出してしまいます。

先ほど、草津工場で削減できる二酸化炭素は年間約1500トンとお伝えしましたが、この水素製造に係わる二酸化炭素の排出を含まない数字。
なので最終的には、使用する水素も再エネ由来の「グリーン水素」にし、事業活動に必要な電力すべてを再生可能エネルギーでまかなう!というのがもっぱらの目標です。

ひときわ目立つ液化水素タンクと液化窒素タンクは、火気厳禁・立入禁止のため厳重に仕切られています。水素タンクへの補充は、一週間から十日に一度程度。

「水を電気分解して製造するグリーン水素は、温室効果ガスを一切出しません。理想はこのグリーン水素を使用することですが、価格が高すぎて、電力会社の電気料金の10倍ほどになってしまうので採用できないのです。
グリーン水素の導入を容易にするためにも、水素を消費する産業が世界中でもっと生まれ、供給するサプライチェーンの活性化につながって、水素価格を下げられるようになってほしいです」(加藤)

パナソニックが率先して水素を消費することで、水素価格の引き下げにも多少は貢献できているのかもしれませんね。

2023年度にも全国、そして海外へ

H2 KIBOU FIELDでの実証実験は一年間を計画し、安全性などを確認するほか、年間でどれだけ100%に近づけられるのかのRE率データを検証します。太陽光の発電予測と需要予測によるRE率の向上も、可能なら試したいとのこと。

検証後は、この新しい純水素型燃料電池や太陽光パネルで構成するRE100ソリューションを、2023年度にも日本・中国・欧州でグローバルに展開する予定です。

H2 KIBOU FIELDには、見学時に利用できるテラス付きの建物もあります。
現在の太陽光と水素電池での発電量や、蓄電池に蓄電されている電気の量などがリアルタイムで見られるほか、建設が始まってから終わるまでの工事の様子なども見ることも可能(現在個人の見学は受け入れていません)

私たちは、日本を代表する電機メーカーとして、脱炭素社会の実現に向けたRE100の取り組みを着々と進めています。H2 KIBOU FIELDの一年かけた実証実験が成功すれば、パートナーとの共創でRE100ソリューションは本格展開に移ります。

地域の工場や大型店舗、物流拠点、病院や学校などの公共施設など、パナソニックのRE100ソリューションが全国に設置されることで脱炭素社会化に弾みがつけば…
皆さんもぜひ、RE100に取り組む企業にご注目ください。

そして今年の梅雨も乗り切っていきましょう!

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