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水はバケツで運べるのだから、電気だって持ち運べたらいいじゃない。

日常生活はもちろん、災害時になくてはならないものといえば、食料、飲料、そして現代を生きる私たちには「電気」はマストアイテム。電気のない世界を想像しただけで恐ろしくなりますね。

食べ物は非常食などである程度備蓄できる。
水はバケツで運べるし、お風呂に溜めることはできる。
さて電気はどうしていますか?

災害時などの非常用電源として、近頃注目を集めている「ポータブル電源」。私たちパナソニックは持ち運べるバッテリーの新しいかたちを2021年6月から展開しています。

その名も「e-block(イ―ブロック)」。
フリーアドレスのオフィス電源として、コンビニのショーケースの照明や店舗の看板、公共施設の案内板といった裏方的な用途で、非常時にも稼働できる"縁の下の力持ち”な存在として、活用が徐々に広がりつつあります。

水のように電気を持ち運ぶ社会を提案する「どこでもライフバッテリー e-block」

「水をバケツで運べるのなら
電気だってバケツに入れて運んだらいいじゃない。」

現代のマリーアントワネットはこんなことを言いそう。
というのは冗談ですが、「電気をバケツで持ち運ぶなんて無理に決まってるじゃない」と思う人は多いのでは?

今回ご紹介するe-blockは水をバケツで運べるのと同じように、“電気を運ぶバケツ”として開発されたのです。
従来のポータブル電源との大きな違いは、今までのポータブル電源は電池残量がなくなるとコンセントがある場所で充電する必要があったけれど、e-blockはほかのバッテリーを充電しておくことで交換しながら使えるということ。

他にはどんな特長があるのでしょうか。

*スマホは約25台充電、ノートパソコン約5時間連続使用可能
*重量は約3kgと小型で軽量なので、電源を必要な場所に運んで使える
*メンテナンスは年1回
*電池の寿命は事前にスマートフォンにお知らせ
*スマートフォンアプリで複数台のバッテリー状態をチェックできる
*静かで排ガスも発生しないので、屋内で使用可
*無料で簡単に廃棄処理できるように考えられている

例えば災害時。
適切な情報を得るにも、家族と連絡を取るにも、何をするにも電気がなければ始まりません。e-blockは災害時の避難場所ではもちろんのこと、避難はせずとも停電した場合のことを考えると自宅にも一つあるとすごく安心。避難所は三密になりやすく、電池を求めて人が集まりやすい充電スポット。このe-blockがあれば各家庭のスペースにもっていくこともできます。

いつもの生活ではどうでしょう。
フリーアドレスが増えたオフィスでは、コンセントのある場所が人気ですが、e-blockがあればどこでも大丈夫。
ちなみにこれからの暑い夏、停電したら冷蔵庫が止まる…e-blockは約10時間稼働する電力を供給できます。(驚くべきは、冷蔵庫の消費電力の低さ)

これだけのパワーがありながらも、とてもシンプルなデザインのこの商品。
人々の生活に必要不可欠な社会インフラを、人々に寄り添いながら提供していく。だからこそのシンプルなデザイン。
この「シンプルさ」にたどり着くまでに、開発者の様々な思いが隠されていました。

「誰もが使うもの」だからこそ、徹底的に人に寄り添ったデザインを実現

”電気のバケツ”として、「重要な社会インフラの1つである電気を運ぶためのものだからこそ、デザインにもとてもこだわりました」と話すのは、e-blockのデザイン担当した、デザインセンターの笹田基弘。

「普段の生活から災害時まで多くの人に使わるものなので、“誰もが使いやすいものであること”がとても大事です。
以前は設計したものを見栄えをよくするだけのお化粧としてデザインしていく思考でしたが、ユーザーは使い勝手や形や色の有り様という商品全体の魅力をデザインととらえるという気付きがあって、初期の企画の段階から技術者も一緒になって設計初期段階からデザインを施していきました。

災害用途というと、これまではデザインは度外視で無骨なものになりがちでしたが、e-blockは人に寄り添った形で、使いやすさを重視して不要なものをそぎ落としたデザインにしました。美しいデザインにしようと。」

使いやすさを重視するために、まずこだわったのはサイズ感。
e-blockの本体サイズは、幅9.8×奥行11.5×高さ22㎝、重量約2.9キロと、軽量コンパクト。どこにでも持ち運べるペットボトルのサイズ感を意識しました。
一方形状は、e-blockの名前が示すとおりシンプルなブロック型。

「本体自体は、ブランドを表現した誰にでも優しい丸みを帯びたシンボリックな形体で、一度見たら忘れられないイメージになるようにデザイン。それと同時に、空間にある機器になじみやすいデザインになることと、他の機器との親和性も追求しました。

というのも、現在はe-block本体に加え、スタンド型とデスク型の充放電器が発売されていますが、今後もさまざまな機器に搭載していくことを想定しています。そのため全体の設計思想としては、将来を見越して、汎用的に使えるデザインを考えています」

具体的にそれが表れている一例が、ハンドルと端子部分です。

e-blockステーション

「既に販売されているスタンドタイプとデスク型の放充電器は、本体を上から下にはめこんでセットするスタイルですが、9月に発売するe-blockを3台まとめて充電できる装置「e-blockステーション」は、斜めにスライドさせるスロット式でどのような機器に取り付ける際にも装着しやすいようにしました。」

EW社でe-blockの事業を統括しているエナジーシステム事業部 システム機器BU 商品企画部で商品企画のアドバイザーをしている遠矢正一はこう話します。

「e-blockは、電動アシスト自転車と同じぐらいの電気のエネルギー容量を搭載しています。この種の製品の電池バックは大きな取っ手がついたラーメン屋さんの岡持ちスタイルが一般的です。

しかし、将来的にはe-blockをたくさん搭載してもっと大きなエネルギー容量のものを作りたいと考えています。そうなると、ハンドル部分がデッドスペースになってコンパクトでなくなってしまう。
だからこそ、上に飛び出た取っ手の部分をなくそうということになりました」

e-block断面図
e-block断面図

「形状をシンプルな直方体にしたいのですが、中の電池の並べ方を考えた時に、合理的な法則性に沿って並べると、両サイドに空間ができてしまいます。
そこでその空間を利用して、一方をハンドルに、反対側のスペースに接続端子をレイアウトして、無駄なスペースのない構造になるように工夫しました。

充電状況や残量を表示するためのLEDランプの表示を天面に備えたこともそう。e-blockがさまざまな組み合わせや形態で使われることを想定し、汎用性を徹底したデザインに仕上がっています。」

モノづくり、デザインの奥深さを感じるこの二人の話。

今までの「長い歴史」を作ってきた2人だからこそ実現できた、未来の製品の作り手、使い手のことまで深く深く追求して出来上がったe-block。
次回はこのe-blockが誕生するまでのその「長い歴史」をひも解いていきます。