照明設計のあり方を変えた、6つの「プランニングコンセプト」とは
夜の時間がどんどん長くなるこの時期🌙
あったかい自宅で、の〜んびりまったり過ごしたいですよね。
アロマやBGMなど室内のリラックス度を高める方法はいろいろありますが、おすすめなのは「あかり」をうまく使った空間づくり。
でも、あかりをうまく使うって、具体的にどうすれば良いのでしょうか。
温かみのある白熱灯に変える?おしゃれなデザインのセードを選ぶ?
「まず、“あかりと空間の関係性”を考えることが大切です」
そう話すのは、パナソニックのインテリア照明デザインを担当している吉川 豪(たけし)。
そう言われてみると確かに、狭い部屋にギラギラと明るすぎるあかりがあったらそわそわしてしまいそうだし、
逆に広い部屋の真ん中に弱々しいあかりしかないと寂しくて不安になってしまいそう……。
今でこそ照明器具は建築の一部として捉えられ、多くのプロダクトに建築的視点が取り入れられるようになっていますが、
実はその始祖とも言える活動が25年も前のパナソニックで始まっていたことを知っていますか?
活動のメンバーとして当初から携わっていたのが、吉川。
現在の照明器具シリーズ「HomeArchi(ホームアーキ)」につながったこの活動に、今回の記事で迫ってみたいと思います。
建築家の視点に立つと、照明器具はどう変わる?
住宅、オフィス、店舗、公共施設などさまざまな場所・シーンに応じた照明器具を幅広くつくってきたパナソニックですが、1990年代にとある不満の声がちらほら聞こえてくるようになりました。
――それは、建築家や設計者など空間デザインのプロからの
「使いやすい照明器具がないんだよな……」
という切実な声だったそうです。
従来とはまったく異なる視点でのモノづくりは、まず社外の建築家とコミュニケーションを取って、実際の建築を見に行くことから始まりました。
さまざまな建築・設計のプロフェッショナルと勉強会を重ね、建築家の視点で徹底的に考える中で、大切な気づきがあったと吉川は話します。
この着想から7年。徐々に品番数を増やしていき、2004年にシリーズとして完成したのが、「HomeArchi」でした。
建築的な視点から住空間を見つめ、建築空間を創造する人が自由に使える“素材”としてのあかりに徹した照明器具シリーズです。
ここで着目したいのが、革新的なのはHomeArchiのコンセプトだけではない、という点。
さて、どういうことだと思いますか?
「まず、光ありき」。通常ではありえない手順での商品開発
照明器具を開発する際、通常であれば「ダウンライトをつくろう」とか「スポットライトをつくろう」といった“アイテム”起点でプロジェクトが進みます。しかしHomeArchiは「どんな心豊かな空間をつくるか」といった理想の“空間”を考えるところからスタート。
その上で、理想の空間のために必要な照明器具をどこに設置すべきか、どんな形にすべきか、ダウンライトなのかスポットライトなのか……を決めていくのです。まさに、「はじめにまず、光ありき」!
革新的だったのは、モノづくりの手順だったのです。
【6つのプランニングコンセプト】
HomeArchiの商品開発のベースになっているのは、下記6つのプランニングコンセプト。
建築・設計のプロフェッショナルとの協働で抽出した、建築の作法で考え抜かれた“あかりのあり方”をまとめたものです。
1)陰影をつける
空間に陰影をつけて豊かな時間を演出する方法は、
もともと日本人が行っていた光の使い方ですが、
近代になってシーリングライトで部屋全体を照らす手法が主流になり、
失われつつありました。あかりによって空間に明暗をつけることで、
立体感が生まれ、広がりや奥行きを感じられるようになります。
2)床・壁・天井で光を受ける
建築を構成するのが「床・壁・天井」の3つの要素。
照明器具から発せられる光を建築側でどう受けとめて明るさとして演出するかを考えることで、
空間の開放感を強調することができます。
3)あかりだまりをつくる
焚き火に人が集うように、人間はあかりに集まろうとします。
リビングテーブルやダイニングテーブル上など人の集まる場所にあかりだまりをつくることで、
集いたくなる空間の中心感をつくり出します。
4)あかりを中心からずらす
空間の中心だけに合わせて照明器具を施工すると、
どの角度から見ても同じような景色になってしまいます。
一方、中心からずらして施工すると、陰影が生まれて光の表情がぐんと豊かに。
床・壁・天井を立体的に演出するのに効果的な手法です。
5)視線の先を明るくする
日本の住宅は海外のように広くはありません。
しかし光の使い方によって、空間の広がり感を演出することはできます。
例えば視線の先にある壁などを明るくすることで、奥行きを強調することが可能。
より広く豊かに暮らしてもらうためのポイントです。
6)あかりの重心を下げる
低い位置に光を配置すれば、空間に落ち着き感やくつろぎ感を持たせることができます。
まずはその空間でどう過ごすかを建築的視点で考え、
照明器具の配置をプランニングすることも大切にしています。
「主張しないこと」こそ、デザインの本質。
実はHomeArchiが誕生する以前、その前身となる「点・線・面」というシリーズがリリースされていました。
こう話す吉川は、パナソニックを一度退職し、他社でのプロダクトデザインにも携わった異例の経歴の持ち主。
照明器具だけでなく文房具・家具・生活雑貨など私たちの暮らしに関わる幅広いモノのデザインを手がけてきました。
25年以上のデザイナー人生の中でのHomeArchiとの関わりについて聞いてみました。
転職を経てパナソニックに再入社し、その後HomeArchiとともに長く歩んできた吉川。
意外なことに、パナソニックの弱点だと言われることも多い“多部門・多人数”こそが、HomeArchiを生み出す原動力になったのではないかと話します。
――新たなモノづくりへの挑戦がカタチになった「HomeArchi」。
ベースとなる考え方はそのままに、さらに現代に合わせてアップデートし続けています。
次回はHomeArchiをさらに掘り下げ、新たに誕生した「Soft Glareless Down Light」についてレポートします💡
ダウンライトに込められたこだわりの数々をお楽しみに!
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