人が集う、憩う。あたたかな光を。
突然ですが、夕飯の時間をイメージしてみてください。
ほかほかのご飯、一緒に食卓を囲む家族や友達の顔。
――さて、その場面を照らしているのはどんな照明ですか?
今回は、ダイニングテーブルなど人が集う場所にあたたかく心地よい光を投げかける「ペンダントライト」がテーマ。
暮らしやトレンドの変化に合わせて開発された、新しいコンセプトのペンダントライト「フラットランプペンダント」のデザインを手掛けた、
パナソニック デザインセンターの森琴音に、“光をデザインすること”についてインタビューしました。
横型から、縦型へ。ダイニングの新しい世界を拓く
少し前まで、ダイニングの上にはデザイン性重視の大型の照明を1灯だけ吊るすのが一般的でした。ダイニングテーブルを広く照らせるように、横広がりのデザインのものが主流だったんです。デザインもいろいろありますよね。
一方で昨今は、スケルトン天井に配線ダクトを設置し、そこに小型のペンダントライトを複数吊るす連灯スタイルがおしゃれなオフィスやカフェだけでなく、住宅でもトレンドに。
たしかに配線ダクトを使った照明は、ライフスタイルや家族構成の変化などに合わせて気軽に照明の位置や種類を取り替えられて便利ですよね!
ですから、従来の“横型”から発想を転換し、連灯スタイルで住宅にも非住宅空間にも馴染む“縦型”のペンダントライトがあったらおもしろいのでは?とデザインに挑戦したのが、当時入社2年目だった森でした。
「今回光源に使ったのはLEDフラットランプ。集光タイプと拡散タイプの2種類があり、シンクロ調光タイプのものであれば昼光色や電球色などの色合いや明るさの切り替えができるなど機能も豊富で、今までになかったペンダントライトがつくれるんじゃないかと可能性を感じました」と開発のきっかけについて話すデザイナー・森。
森:店舗やオフィスなどではスケルトン天井など高い位置から吊るすことが想定されます。当初は光の届き方を考慮し、深型で縦に長いデザインが良いのではないかと考えました。
実際に店舗などの設計・施工に携わる方々に何度もヒアリングを行い、その仮説が正しいとわかったんです。従来の“横型”ではなく、“縦型”で大型のペンダントライトを連灯するーーそれによって、オフィスなら社員がコミュニケーションしやすいあたたかい雰囲気、住宅なら食卓に自然と家族が集まりたくなるような雰囲気をつくれるのではないかと考えました。
「光をデザインする」ということ
今回のペンダントライト開発で“肝”になったのは、照明器具そのものの色や形だけでなく、「光のデザイン」だったと森さんは言います。
『実態のない“光”をデザインするってどういうこと??』と思われた方も多いかもしれませんね。そのあたり、ぐいぐい聞いてみました!
森:”光”って、その空間の雰囲気をがらりと変える力があると思うんです。明るさ、色合いはもちろん、光の広がり方や影の落ち方などで、落ち着いた空間にも華やかな空間にも演出できるんですよね。
そういった意味では、ペンダントライトはダイニングテーブルなど人が集う場所の中心に位置し、その光に自然と人が集まることでコミュニケーションが生まれるーーそんな空間をつくり出せるものにしたい、とイメージを膨らませました。
森:とはいえ、光がつくる陰影をスケッチやコンピュータ上だけで考えていても、いざ実物にしてみると『なんかちょっと違う』ってなることも多くて……。データ上ではないはずの影が実物では気になってしまったり。
ですから今回は開発スタート直後から試作品をせっせとつくり始めました。
ケント紙を丸めてフラットランプを中に入れ、器具の曲線・角度と光の広がり具合、反射板の角度とランプ位置、それによる光の届き加減などをいくつもつくって確かめるんです。
何個つくったかわからないくらい(笑)。でも、20個くらいはつくったような記憶があります。
森:当時まだ新人だった私にとっては学びながらのデザインワークで、探り探りの状態だったのですが、設計や企画の方、周囲とのやりとりで自分のイメージを伝えるのに試作品がとても役立ちました。
デザイン案に難色を示されても、光の雰囲気をリアルで感じてもらうと『これ、良いね!』と言ってもらえたり、『ここのパーツを細くすればこの影が消えるのでは』とアドバイスをもらえたり。
モノを中心に常に5-6人が集まって話し合いをしながら、2つの方向性に絞り込みました。
演出するシーンや設置部位などが異なる2つの方向性は、社内でも好評を得、どちらも商品化されることに!
●ABOUT PRODUCT●
フラットランプペンダント
■集光タイプ
在宅ワークや学習への集中力と
心地よさを両立するあかり
住宅では在宅ワークや学習などを行うテーブル上に、カフェやオフィスなどの非住宅では執務スペースの大きなテーブル上に連灯することを想定して開発された「集光タイプ」。
従来のデスクライトのようなプライベート感に特化した明かりではなく、集中力・作業性を高める手元の明るさと周囲とやわらかくつながる居心地の良さを両立しています。
■間接光タイプ
人々をやさしく招きよせ、
あたたかな憩いの場をつくるあかり
住宅では食事を楽しむダイニングテーブルを、オフィスなどの非住宅では人がコミュニケーションを深めるリラックススペースのテーブルを想定して開発された「間接光タイプ」。
上部の反射板による光の“抜け”をつくり出すことで、上方向にも下方向にもやわらかな光が広がり、空間に開放感と憩いたくなる雰囲気を演出する。
付いているときも、消しているときも、絵になるデザイン
人がいる時間帯は照明がずっと付いているオフィスなどとは違い、住宅の場合はあかりを消した状態の時間もけっこう長い……ですよね。
実は、このペンダントライトの開発に着手した2020年はじめは、新型コロナウィルス感染拡大防止のため厳しいステイホームが求められた時期。
自身も家で過ごす時間が増える中で『住宅では消えた状態で見る時間が長い。付いているときも、消えているときも、成り立つデザインにしたい!』と強く思ったそう。
森:消したときの室内の風景を考慮し、集光タイプはアイコニックな形・親しみのある形、マットなメタリックの質感に仕上げて、消したときも上質感のあるデザインにしています。
カラーバリエーションは、北欧のインテリアスタイルにも馴染みやすいシャンパンゴールドと、ヴィンテージスタイルを感じさせるメタリックブラウンの2色。形状がシンプルなので、モダンで上品なインテリアにも調和すると思います。洗練された印象と、どことなくあたたかみの漂う色・形・質感に仕上げました。
森:もう一つの間接光タイプは、トップの部分に“抜け”をつくり、軽やかな印象に仕上げました。
実は上部の反射板とセードの色は微妙に違うんです。当初は同じ色にする案もありましたが、そうすると消したときのメリハリがなくなってしまって。微細な違いを持たせることで、消灯時にも反射板が見た目のポイントとなり、高いデザイン性を実現することができました。
デザインとは、空間・人・光を考えること。
「人は光に対していろいろな感情を持ちます」と、森は言います。たしかに焚き火に不思議なくらい癒されたり、間接照明だけで映画を楽しむと没入感が増して気分が上がったりしますよね。そういった人の感情も踏まえてデザインワークを行うことを何より大切にしているそう。
森:人の感情にどのように影響するか。それって照明のデザインを考える上でとても大切なことなんです。
人が『心地いいな』と思える光の表現には、実際に試作品をつくってみることが何より重要。実際に今回は、試作品をつくって光と影の表情を肌で感じながらチームでイメージを共有しました。間接光がどんな雰囲気になるか、セードの素材が空間にどのような印象を与えるかなど、目で見る・手で触る・肌で感じながら確かめることで、心地よさや情緒のヒントが得られるのではないかと思っています。
今後は光のゆらめきを動画で確かめるなど、デザインイメージのアウトプットにもこだわりたいですね。
最後に、聞いてみました。
ーー森さんにとっての「デザイン」って何ですか?
森:空間・人・光を考えることですね。
今回のペンダントライトのように、人が自然と寄ってくるあたたかさを表現したり、情緒を感じさせたり、コミュニケーションを生み出したり。その空間で、人々がどんな気持ちで過ごせるのかを光を通してカタチにしていけたらいいな、と思っています。
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