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スタートアップとの共創によりワクワクに満ちた「未来のカタチ」を探す旅へ

新規事業創出、と聞くと「新しい製品を開発する」「今までにないサービスを実現する」といった“ゴール”を思い浮かべる方が多いかもしれません。

そんな中、新規事業創出の“プロセス”にフォーカスし、新しいテクノロジーを活用して0→1をつくり出そうとするオープンイノベーションプロジェクトが進行中!スタートアップとタッグを組み、生成AIを活用して新しいモノづくりに挑戦するメンバーにお話を聞いてみました。

■INTERVIEWEE
エレクトリックワークス社
ライティング事業部 プロフェッショナルライティングBU
 渡辺 健史(写真右から2番目)
デザインセンター ライティングデザイン部
 椋本 真由子(写真右端)
 
Final Aim, Inc.
Co-Founder & CEO 朝倉 雅文さん(写真左から2番目)
Co-Founder & CDO 横井 康秀さん(写真左端)

「生成AI×デザイン」の台頭を
なんとか新たなチャンスに変えられないか?

エレクトリックワークス社 渡辺 健史

――新規事業創出のプロジェクト立ち上げの経緯をお教えください。

渡辺:これまで私たちは、「照明」による心豊かな空間づくりを行ってきました。住宅、オフィス、施設などを主な領域にしてきましたが、独自の知見・技術を新たな領域でも展開できないか?と思ったのがきっかけです。

そしてリサーチを進める中で、改めて「デザイン」がお客様に与える影響が大きいと実感したんです。プロダクトにしてもサービスにしても、その価値を上げるためには「デザイン」は欠かせない要素。でも、これまでパナソニックはデザインを対価に直結させる、という点は弱かったと思うんです。

だからこそ“デザインを価値化する”をテーマにしながら、新たな領域で社会的インパクトのある事業を創出したい!とプロジェクトを立ち上げました。

エレクトリックワークス社 椋本 真由子

椋本:実際、デザインが担う領域は広がっています。その中で一つあげるとすれば「生活に馴染む」というベクトルにお客様も価値を見出されるようになってきているんです。

使う人へのやさしさや心地よさ、暮らしへの寄り添いといった感性的な部分が選ばれるポイントになってきているんですよね。

――新規事業創出の“プロセス”そのものに、今までにないスタイルをとり入れられたと聞いています。

渡辺:はい。パナソニックのような大企業は、過去からの多くの知見が蓄積されていて、それらを活用して新たなアイディアを出すことは得意です。

一方、世界には日々新しい技術がすごいスピードで生まれ、さらに進化し続けている。それらは私たちをまったく違うレイヤーから追い抜いていきます。新技術の存在は無視できないと思い、デザインを考えるプロセスに新技術をとり入れられないか検討しました。

新技術――その一つが、生成AIです。

生成AIという言葉が出てきてからあっという間に「生成AI×デザイン」の組み合わせが登場し、その進化のスピードに驚愕しました。生成AIなら、必要な情報を打ち込んで「プロモーション動画を作成して」と命じれば、これまで人間が何ヶ月もかけて制作していたようなものをわずか1分で完成させてしまう。これは、私たちが長年積み上げてきた価値にも侵食してくるのではないかと感じました。

――危機感を持った、ということでしょうか。

渡辺:その通りです。ですが同時に、1つのツールとして活用してみてはどうだろう、という思いも持ちました。

とはいえ、新たな技術を活用するのはパナソニックのような大企業は慎重にならざるを得ません。なぜなら既存事業としてすでに成功している事業を「深化」させつつ、新しいことにチャレンジする「探索」、これらの“両利き”の経営を考えなければならず、新しいことに全リソースを注ぎ込むことはできないからです。

また、生まれたばかりの技術が既存技術にどう影響するかの不確実性やリスクも気になるところです。そこで、生成AIの知見をすでに豊富に蓄え始めているスタートアップとの共創を考えました。

――スタートアップはどのように探しましたか?

渡辺:実は私、所属部署に籍を置きながら異なる事業・部署でも挑戦できる「社内複業制度」を利用して、シリコンバレーにあるパナソニックホールディングスによるスタートアップへの投資会社・CONDCTIVE VENTURES でも働いているんです。

そこには当然スタートアップのネットワークが豊富にあり、協業先のリサーチも可能でした。ある日、この会社にて勉強会の開催が決まったのです。
当日登壇していただいたのが、シリアルアントレプレナーでありベンチャーキャピタルのベンチャーパートナーでもあるFinal Aimの朝倉さんとインダストリアルデザイナーの横井さんでした。

Final Aimさんはデザインとテクノロジーの領域を中心に、“本物であることを証明する”事業を行なわれているスタートアップ。私たちが持っていた「デザインを価値化する」課題に非常に近いと感じ、「勉強会ではなく、直接話す時間をもらえませんか?」と声をかけたのがすべての始まりでした。


【Final Aimってどんな会社?】
Final Aim(ファイナルエイム)は米国本社、日本支社のスタートアップ企業。デザインと製造業界にフォーカスし、モノづくりを行う上で“本物であることを証明”するためのプラットフォーム“Final Design”を展開。例えば生成AIを活用してデザイン開発を行う場合、その過程で著作権や意匠権などの知的財産権に関するリスクを解決する必要がある。そこでFinal Aimは知的財産権が正しく担保された中でデザイン開発が行われるように、“Final Design”を提供。これまでも数々の企業で生成AIを活用したデザイン開発の協業先として選ばれている。2022年米国UC BerkeleyのアクセラレーターBerkeley SkyDeckに採択、"Most Likely to Become the Next Unicorn"に選定される。2023年Stanford大学にてInnovation showcaseを受賞。

プラットフォーム“Final Design”

互いに感じた「魂を揺さぶる熱意」が
共創を実現する原動力に

Final Aim, Inc. 朝倉 雅文さん

――Final Aimの朝倉さんは渡辺からのアプローチをどう受け止められましたか。

朝倉さん:実は私、以前からパナソニック製品のファンで……パソコンはずっとレッツノートを使っているんですが、ボタンを押したときの心地いい感触や、画面の表示など、使う人のことをよく考えられたやさしさがあるんです。それに性能がよく強靭でデザインもいい。

調べてみると、パナソニックでは松下幸之助さんがデザインの重要性に着目し、自ら考案されたものもあるんですよね。企業内に脈々と受け継がれているモノづくりの思想があり、そこで働く渡辺さんからも熱い気持ちのバトンを受け取ったわけです。世の中をもっと良く変えていきたい!という強い思いに魂を揺さぶられました。

さらにFinal Aim社のチームはこれまでAI×製造業分野のスタートアップでの経営や大企業での新規事業創出などの経験もあり、その視点から「このアイディアは新しい事業として大きな可能性があるのでは」と強く感じたのです。

日本の経済をこれから伸ばしていくには、既存産業だけでなく新しい産業も必要。大企業とスタートアップのシナジーは、新しい産業をつくりだす起点になると思うのです。そして、新規事業開発においてデザインとテクノロジーは欠かせない存在であり、そういった面でも、今回の渡辺さんのビジョンはFinal Aim社が伴走させていただきたいと思っていたイメージとぴったり合致したというわけです。

――パナソニック側としては、Final Aim社のどういった点に魅力を感じましたか。

渡辺:私たちの目的は、社会的な価値がある新規事業を創ることです。

そのためには、大企業がずっと続けてきた“過去からの知見を積み上げて発想する”やり方ではなく、“次世代の技術を活用して別方向からのアイディアを生み出す”ための新しいプロセスに挑戦したい。今までの殻を破るようなチャレンジがしたいんです。そこではまさにFinal Aimさんの知見が不可欠。殻を破ると言っても、その過程で、既存のモノの知的財産権を侵してしまうことは絶対に避けなければいけませんからね。

シリコンバレーの名だたる企業にも負けない、パナソニックメンバーの専門性と自由度の高さ

――熱い思いでつながったFinal Aim社とパナソニック、現場での共創はすでにスタートされていますね。今はどんな状況でしょうか。

渡辺:2年前に私がひとりで「やりたい!」と立ち上げたプロジェクトですが、今はデザイナーや知財の専門家、技術者などの事業化に向けたプロフェッショナルたちが「面白そう」と社内外からたくさん加わってくれ、Final Aimさん含め30名ほどのメンバーで活動しています。

さらにはエレクトリックワークス社経営層からも具体的なサポートがあり、後押ししてもらっています。現在はデザインをどういった事業領域に活かしていくか、生成AIをどう活用したらより事業の成長につなげられるか、本気の事業化に向けてトライアルを繰り返している状況です。

やはり社内だけで考えていると、過去の知見をベースにしている分「これが正解」みたいな無意識の共通認識があって、議論がそこに向かいがちなのですが、Final Aimさんとの共創では「こんな考え方もありでは?」とまったく違う角度から意見がどんどん出てくる。期待していた部分ではありますが、期待していた以上に刺激を受けていますね。

――まったく違うバックボーンや風土を持つ「スタートアップ」と「大企業」の掛け合わせは、思ってもみない化学反応を起こしそうですね。共創を通して互いに気づきや発見はありましたか?

Final Aim, Inc. 横井 康秀さん

横井さん:スタートアップ側の私たちにとっても驚きの連続です。私はCDOという立場上、デザイナーと一緒に活動する機会が多いのですが、パナソニックで働くデザイナーの「自由度の高さ」には驚きました。

大企業って、ルールがきっちり決まっているイメージを持っている人も多いと思うのですが、まったく違う。私自身、シリコンバレーの名だたる企業で働くデザイナーとの交流も多いのですが、会社人としての彼らの働き方やデザイン制作におけるプロセスには、実はかなり制約があるんです。

それに比べ、パナソニックのデザイナーの仕事には“余白”があるというか、現場の裁量が非常に大きいと感じました。実際、パナソニックのデザイナーは社外のイベントや勉強会にも積極的に足を運んだり、人脈を広げたりとオープンに活動されている人も多いですよね。

椋本:そうですね。私も社内デザイナーとしてパナソニックの名刺を持っていろいろな場所に出かけ、「感じる、体験してみる」プロセスを大切にしています。本当に心地よい空間づくりは、画面や資料の中だけでは叶えられないですから。

五感を使ったインプットは、感性に訴えかけるデザイン開発に欠かせないんですよね。私も他社を経験してパナソニックにキャリア入社したのですが、自由度の高さは思っていた以上でした。自分がやりたいことを周囲が尊重してくれる、会社も後押ししてくれる雰囲気があると思います。

横井さん:パナソニックで働く皆さん1人ひとりの専門性の高さにも改めて驚かされましたね。例えば心地良い空間づくりって、見た目のデザインだけでなく匂いや空気の流れなど複雑な要素が絡み合っているので「こうすればできる!」という決まった解がないんです。

ところがパナソニックのデザイナーは「なぜこの空間が心地良いのか」を論理的に説明できる。これはすごいことですよ。実は豊富なノウハウや経験に裏付けされたスキルを持っているのに、当たり前のような涼しい顔をしている方がたくさんいますね(笑)。

朝倉さん:それは私も完全に同意です!大企業には人・モノ・金・情報などのアセットがたくさんありますが、パナソニックの場合はとくに「人」がものすごい力を持っている。新事業に取組もうとする熱意ある人材やデザイナーはもちろん、知財部の方々も非常に優秀です。シリコンバレーの多くの企業と比べても世界レベルで通用する方ばかりで、もっとそのすごさが世の中に知られても良いのではと感じました。

生成AIなど新しい技術を活用すると言っても、最終的に良いモノを作るには、「人」の力が欠かせないと考えています。生成AIでアイディアやデザインのパターンはたくさん出せるかもしれませんが、それらの精度を見極めたり、実際に製造するのに必要な機構を考えたりするのは「人」です。

そしてまだ芽吹く前のビジネスの“種”に対して知財をどう活用し価値に変えていくか、という面も知財の専門家の知見が不可欠。そういった意味では、今回のパナソニックさんとの新規事業創出は大きな可能性とワクワクに満ちたプロジェクトだと感じています。

――ありがとうございました。
 
次回はモノづくりにおける「生成AI×デザイン」を深掘りしながら、知財をどう考えるかについてフォーカスします。ぜひお楽しみに!


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