開業10周年を迎えた東京スカイツリー🄬を輝かせるライティングの秘密
こんばんは、ウラナレ編集部です。
昨日2022年5月22日、東京スカイツリーが開業10周年を迎えました!
この10年で「東京といえばスカイツリー」と印象もかなり強くなってきたのではないでしょうか。
テレビなどの電波を送る電波塔である東京スカイツリー。
関東を一望できる展望台などを備えた観光施設でもあり、
そして東京の夜を輝かせ、多くの人の目を楽しませるランドマーク。
スカイツリーがランドマークとしてとくに美しく見えるのは、夜間のライティングでしょう。開業以来点灯されてきたライティングの種類は130以上にものぼります。
色鮮やかで繊細かつ動きのあるライティングは、訪日外国人のみならず、日本に住む私たちにも新鮮な感動を与えてくれます。
スカイツリーに使われている照明器具や演出システムを担当したのが、そうわたしたちパナソニック。
本日5月23日、東京スカイツリーのライティングパートナーとして、パナソニックはスカイツリーで撮影を行った新聞広告を出したんですよ。ご覧になられた方いらっしゃいますか?
さあ、今回は世界で先駆けて採用された大型建築物向けのLED機器やライティング演出など、光り輝くスカイツリーの照明の秘密にせまります。
ウラガワを知ると、東京の夜空がまた一層きらびやかに見えるかもしれません!
なぜスカイツリーの照明はクールなのか
スカイツリーのライティングといえば、江戸で育まれてきた心意気の「粋」、美意識の「雅」、賑わいの「幟」という3つのオペレーションが1日毎に現れる新しいスタイルのライティング。
そんな東京スカイツリーのライティングにはなんだか「クール」な印象がありませんか?
それは、従来のライティングとは手法や考え方が大きく異なるから。
今までビルやタワーなどの大型建築物のライティングは、下方向から光を当てる、文字通りのライトアップが使われていました。
しかし東京スカイツリーの場合は、いくつもの照明機器を組み合わせたライティングが行われているのです。
たとえば、エレベーターなどが通っているタワーの中心部分「心柱(しんばしら)」と、外側の鉄骨の両方が、別々にライティングされ、さらに、白く煌めくような直接照明も加わって、動的な演出も行われています。
それが、東京スカイツリーをクールに見せている一つの理由。
今回はプロジェクトに携わった中心メンバーの1人である、ライティング事業部 エンジニアリングセンター 東京照明EC(当時所属名) 上田泰佑に、東京スカイツリーの照明の特徴、そして2020年に行われたリニューアルについて語ってもらいました。
当たり前でなかったオールLED化を提案、挑戦する強さ
パナソニックが東京スカイツリーのライティング事業に着手したのは、開業から6年前の2006年まで遡ります。まだライティング機器のパートナーとして選ばれる前の計画段階でしたが、VRを使ったシミュレーションを開始。
2009年には器具設計のためのシミュレーションをスタート。試作品の製作と改良を繰り返します。
当然、まだ東京スカイツリーは竣工前だったので、試作品の効果を現場で確認することはできません。そこで使われたのがパナソニック独自のCG解析技術。
鉄骨形状や素材などの情報を入力し、CG上で照明機器の効果を確認しながら、反射板などの設計を見直し、開発プロセスを大幅に短縮しながら、理想の配光設計を実現していきました。
今はLED照明が当たり前となりましたが、あの頃大きなチャレンジだったのはすべての照明をLED化することでした。
当時ライトアップでよく使われていた照明機器は、HIDランプ(高輝度放電ランプ)が一般的。
LED照明はまだ家庭用の電球がようやく普及しつつある時期でした。東日本大震災によって節電意識が高まり、LED照明が急速に普及したのは、記憶に新しいのではないでしょうか。
今でこそ、道路やスタジアムの照明など、LED照明に置き換わっていますが、当時はまだ屋外で使えるような出力の高いLED照明はまだ実用化されていませんでした。
ご存じのように、低消費電力かつ、従来のHIDランプに比べ色が美しく、配光制御もしやすいメリットがあるLED。
だからこそ、私たちパナソニックは、あの頃はまだ当たり前ではなかったオールLEDで実施することを打ち出し、採用いただきました。
反射板の設計には、以前からスタジアムや道路照明での実績も活かされたといいます。こうして完成した照明機器は、すべてスカイツリー仕様です。
ひとつの色を出すためだけにLEDを開発
スカイツリーのライティングは単に明るく照らすだけではありません。
人々に美しさを感じさせる演出のためのライティングです。そのため、表現できる色域なども高い水準が要求されました。
もっと遠くまで「東京」の美しさを伝えるために
こうして実現した東京スカイツリーのライティングですが、開業から8年後の2020年には早くもリニューアルされます。
スカイツリーで一般客が登れる最上階地上450mのさらに上、地上497m地点を中心に照明器具が増設されました。スカイツリーのトップである「ゲイン塔」をライトアップするため、既存の器具を置き換える形で新しく60台の照明器具が設置されました。
ゲイン塔自体にも輝度光とライトダウンで計119台を増設。
新設された器具は2種類で、高出力の「ダイナペインター(スカイツリー仕様)」と、ピンスポット配光の「ダイナシューター(スカイツリー仕様)」です。
今回のリニューアルのもうひとつの目的は、羽田空港からの視認性向上でした。東京オリンピック・パラリンピックを控えていたタイミングであり、訪日客にもライティングを楽しんでもらおうという試みです。
羽田空港に着いたときに東京スカイツリーのライティングが目に入ると、「日本に、東京に帰ってきたなあ」「日本に来たんだな」と、まるでスカイツリーにお出迎えをしてもらっているようなあたたかい気分になる方もいらっしゃるかもしれません。
ここにもライティングのチカラが隠されているんです・・・!
ただこれはコストもかかるため、何度も設置して検証するのは難しい。そこで別の現場実験が必要になったといいます。
超狭角ピンスポット配光で「光害」を回避
リニューアル工事で遠方からの視認性が高まったスカイツリーですが、単に明るくするだけでは周辺住民に眩しさを感じさせてしまう「光害(ひかりがい)」も懸念される…
リニューアル工事でゲイン塔の最登頂部に設置されたダイナシューターは、外側に光を放射する輝度光ですが、こちらは光害を生じさせない設計になっています。
ピンスポット配光は、いわば「灯台下暗し」の原理を活用したものです。遠くからもクッキリと輝いて見え、近い場所では眩しくなく、間接照明のやわらかい光で美しく見えるというわけです。
「ひかりのうつろい」を表現する演出制御
リニューアル工事で追加された照明は、開業時に設置されたものよりも性能が向上しています。ダイナペインターの明るさは約10倍にもなりました。
また、新設機器では色の表現領域が向上。光源は従来のR(赤)・G(緑)・B(青)に加えて、W(白)のLED素子を加えたRGBWとなり、なんと…約42億色もの表現が可能に!!!
BのLED素子は深い青色が出せるディープブルーを採用したため、同じ「ブルー」でも新しい機器ではより深いブルーが表現できるようになったのです。
ただ照明機器を置き換えたのではなく、演出制御も進化したことで、動きがある、かつスカイツリー全体で統一感がある演出が可能になりました。
演出制御のソフトは誰にでも容易に扱える仕様となっているため、130種類以上のライティングのバリエーションが生み出されることにつながりました。
このようなきめ細かな調整が、「日本」を感じさせる艶やかなスカイツリーのライティングの演出につながっています。
ここまで読んでくださった方は、きっと今夜のスカイツリーは今まで以上に輝いて見えるかもしれませんね。