みんなの気持ちと光をひとつに!"綺麗なだけじゃない"ライトアップのヒミツ
“ライトアップ”と言うと、観光名所やイベントなどでよく見かける照明演出。
お城やモニュメントなど様々なものが、美しいライトアップで彩られていたら、自然とテンションが上がっちゃいますよね!
近年は、街の彩りだけではなく、特定の啓蒙活動への賛同をテーマカラーに沿ったライトアップで示す“アウェアネスカラーライトアップ”と呼ばれる運動も盛んに行われているのをご存じですか?
東京都庁や大阪城、京都タワーなどの著名な建物や各地の庁舎、さらには一個人の施設に至るまで数多く実施されているんですよ!
今回はみなさんが何気なく目にしているこの運動と、パナソニックの技術の密かな関わりについて、たっぷりご紹介します。
“アウェアネスカラーライトアップ”って何?
“アウェアネスカラーライトアップ”とはライトアップを通じて社会運動への支援や賛同の意思を発信する活動です。
見に来た人には夜間景観の楽しさと、「今日のライトアップはいつもと違う色がついているけれど、何のイベントだろう?」という風に社会啓蒙をさりげないかたちで伝えることができます。
アウェアネス(Awareness)とは、“気づき”という意味を持つ英語で、例えば乳がん検診の早期受診の推進などを目的とした「ピンクリボン運動」や、子ども虐待のない社会の実現を目指す「オレンジリボン運動」など、運動のテーマの色に沿ったライトアップで賛同の意思を示すことができます。
医療従事者に対する敬意と感謝を示した青色のライトアップなども広義のアウェアネスカラーライトアップと言うことができます。
アウェアネスカラーライトアップを深掘り!
“アウェアネスカラーライトアップ”の色とテーマは多種多様!
例えば、年間を通じて主なものだけでも以下のような運動やイベントが存在しています。
アウェアネスカラーライトアップは全国各地で実施されています。
しかし、光の色が明確に指定されている訳ではないため、同じテーマカラーであっても各地・各所によって実際の見え方はさまざま。
これは各地・各所それぞれの想いが光の色に込められているからだと思われます。
医療従事者支援のブルーライトアップの例に見る光色のイメージのばらつき
例えば、新型コロナウイルス感染症に対し、献身的に立ち向かう医療従事者への感謝を表す意味で青色に照らすライトアップ運動は、イギリスの国営医療サービス事業である国民保健サービス「NHS」のシンボルカラーの青に由来していると言われています。
しかし、「ではこのシンボルカラーをそのまま光にしよう!」と思っても一筋縄ではいかないのが、「光」の難しいところ。
印刷物用の色指定値(CMYK)をそのまま投光器で照射しても、印刷物と光では見え方が異なってしまいます。
また、街全体で同じテーマカラーをライトアップしようとしても、建物ごとの色味が異なっていると今一つ一体感を出しにくかったり…
そこで、さまざまな照明設備を手掛けるパナソニックでは、色味の調整にとことんこだわります!
「皆が好ましくイメージしている光とは?」、「みんなの想いの代表的な色のアウェアネスカラーライトアップはどうなっているのか?」を研究しました。
カラーライトアップにおけるパナソニックの取り組み①:実態調査
取り組みの1つ目は、アウェアネスカラーライトアップの実態調査から。
テーマカラーと照明光色の関係性を探るため、実際に照射されている建物の光色を測定しました。担当したライティング事業部 エンジニアリングセンターの松崎は、その内容を次のように説明しました。
その結果、導き出されたのは、大雑把に色を青・赤・緑といった色名に基づいて区分した場合に、同じ「青」と言っても、実際には薄い青から濃い青、緑っぽい青などさまざまな色味が存在しているということだそうです。
カラーライトアップにおけるパナソニックの取り組み②:主観評価実験
次に行ったのが、各色における好ましい光色を求める被験者実験です。社内の暗室に設置した白壁を好ましい色(青、黄等々)でライトアップするよう被験者(20代~50代の男女22名)に依頼し、フルカラー投光器の出力を調整してもらいました。
実際のライトアップに用いられる施設の壁面には、白以外にも灰色や赤レンガ色などさまざまな色が存在するため、被照射面が多様な色彩を含む場面を想定して、カラーチェッカーを置いた上に照射して色味を調整する実験も実施しました。
この結果から、例えば「青」の場合は背景に色彩がある方が低彩度の光になるよう調整する傾向が掴めました。
実験に用いたフルカラー投光器は赤・青・緑・白の4つのLEDを使って色の調整をするのですが、高彩度の「青」を照射するには青色LEDのみを使うことになります。
青色LEDの分光分布は短波長(紫色側)寄りの比較的狭い帯域にエネルギーが集中していて、長波長側(赤色側)にエネルギーをほとんど持ちません。
ですので、例えば緑や赤の背景にこの光を照射しても黒く(暗く)見え、緑や赤と認識することができません。背景に色彩がある状態で高彩度の「青」を照射してしまうと背景の色彩の判別が難しくなるため、このような結果になったと考えられます。
(これはオレンジ色のナトリウムランプがついたトンネルの中で色の判別が難しくなるのと同じ理屈です)
カラーライトアップにおけるパナソニックの取り組み③:AI解析
次の取り組みは、“好ましい色”についてのAIを活用した画像分析。
Web上に公開されているライトアップの画像は、“好ましく撮影できた写真イメージ”であると仮定し、画像をもとにAIで解析を行い、好ましく照射された光色の抽出を試みました。
具体的にはまず、Webなどの公開情報から数百枚のライトアップ画像を集めます。
次に画像解析AIを利用し、建物を分離して認識させた各画像からドミナントカラー(その画像に映る物体を構成する主たる色)および信頼スコア(その予測の信頼度を表す数値)を算出します。
これらの数値から代表的な色度を算出しました。
一方、医療者支援のブルーライトアップを行っている施設の光色の実測値の平均値と、調整法による実験の平均値、NHSによる色票をsRGBの画像上の色度に変換した値を同じグラフ上にプロットします。
すると、いずれの値もWeb上の画像のAI解析による推定値とD65を結ぶ直線付近に分布していました。このことから、本手法によって好ましい光色の傾向を推定できる可能性が示唆されました。
カラーライトアップにパナソニックがここまでこだわる理由とは?
ライトアップの色にパナソニックがここまで力を入れてこだわる理由は、照明器具にとって光色はコンテンツであると考えているから。
パナソニックが全国で手掛けたアウェアネスカラーライトアップの事例は、例えば以下のような場所で目にすることができます。
カラーライトアップによって"みんなの想い"をひとつにしたい
「実地調査では重い機械を背負って現地に一人で行って、夜中に走り回っていました。期間限定のライトアップイベント等では各地に点在するライトアップ施設を一晩で十数ヶ所測定することもあり、結構大変でした」と振り返る松崎。
中でも個人的に興味深かったこととして、白色の実験結果を挙げます。
そして最後に、今後の展望と将来の目標について、次のように語ってくれました。
ふだん私たちが何気なく見ているライトアップ。
その裏には、カラーライトアップによって“みんなの思いをひとつにしたい”という、パナソニックの技術者による想いと、それを実現するための手の込んだ調査・研究が隠されているかもしれません。
ライトアップが行われている施設やスポットを見つけたら、今までとは違った視点で見比べたりチェックしてみてはいかがでしょうか!