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配線器具に「上質で静かな存在感」を
突然ですが、イメージしてみてください。
あなたは今、リゾートホテルにいます。
遅めのブランチを食べた後はテラスでのんびり読書。うたた寝から目覚めると、いつの間にか目の前に広がる海は美しい夕日に染まり始めています。
暗くなりつつある室内にあかりを、とスイッチに手を伸ばす――、
と、その時。
もしも…壁に設置されたスイッチが自宅と同じモノだったら…。せっかくの非日常から現実へと一気に引き戻されてしまうと思いませんか?
空間の中で目立つ存在ではないけれど、人々の快適な暮らしに欠かせないスイッチやコンセントなどの「配線器具」。
一日に何度も無意識に使うモノだからこそ、その空間の雰囲気や過ごし方を“邪魔しない”よう、TPOに合わせたデザインであってほしいですよね。
今回はパナソニックの最上位グレードの配線器具シリーズとして2021年にデビューした「EXTRA」のデザインを担当した近藤に、そんなラグジュアリー空間に求められる配線器具のデザインとはなんぞや?から開発秘話まで、たっぷり語ってもらいました。
「高級」≠「上質」
ハイエンドホテルやこだわりの住宅、店舗などをターゲットに開発された「EXTRA」。
そもそも、そういった“ちょっと特別なラグジュアリー空間”ではどのような商品が求められているのでしょうか。
近藤:もともとパナソニックの配線器具にも、最上位グレードのラインアップはありました。ところが発売から長い時間が経過し、空間が時代とともに変化していく中、「高級」の定義が変わってきてるのを感じていたんです。
そこで今のインテリアに合う、選んで使っていただける配線器具を創ろう!と企画がスタート。まずはホテルや住宅、飲食店や店舗を見て回ることから始めました。海外出張の機会もあったので、場の雰囲気を肌で感じることを重ね、デザインを考えていきました。
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近藤:昭和の住宅なら、「応接間」に代表されるようなわかりやすいゴージャス感が「高級」とされ、配線器具も形状や装飾でそれを表現していたんですね。
ある意味、日本経済がいい時代の物質的な豊かさへのあこがれだったのかも知れません。でも、今の時代を生きている中で、正直そういうものが「高級」だとはどうしても思えなかった。
むしろ、根源的な「素材のもつ美しさ」にこだわることで、地味だけど強さを持った「上質」を目指したいと考えました。空間を構成する床・壁・天井の素材と共鳴する、選んでいただけるものにしたいと。
ここ数年、配線器具デザインに携わってきた近藤は、「空間の主役は配線器具ではない。あくまで空間設計者の想いに沿うことが大切」という考え方を基本としてきました。
しかしホテルやコンドミニアムのような空間では、背景に“馴染む”だけでなく、非日常を“演出”するインテリアエレメントとしての役割も時に求められます。工業製品として、相反する二つの要素をどう両立するか、とても悩んだそうです。
近藤:大事なのは、そこで過ごす人が落ち着いてくつろげる空間をつくることなので、配線器具がいかにも「高級です」って主張していてはダメですよね。無理をした佇まいだと空間が破綻しますし。
そこで着想したコンセプトは、「静かな存在感」。
背景として空間に調和しながらも、触ったときに作り込まれたディテールを感じられる、差し色やアクセントにもなるようなデザインにしたいと考えました。
もてなしを実現するために必要な「しつらえ」
リサーチを通して、近藤が気づいたことがあります。
それは、非日常でハイエンドな世界になればなるほど、その空間のための「しつらえ」が必要になるということ。
配線器具も中にはホテル一棟分用だけのためにあつらえたオリジナルのデザインや、空間設計に合わせた特殊なモジュール展開などもあることに驚いたそうです。
近藤:それは、洋服でいうオートクチュールのような「一品もの」に近い世界。実際に海外メーカーでものすごい数のラインアップを用意し、その都度受注生産に対応しているようなケースもありました。
しかし当社のようなビジネスモデルで少量多品種に対応するのは非常に難しい。高くても指名買いされる存在感がありつつ、工業製品としての最大公約数を目指す必要がありました。
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近藤:一方で、当社の長い歴史の中で培われてきた高い安全性、施工性、機能性という強みは活かしたい。
量産品でありながら、ホテルなどのしつらえに調和できる、一品もののようなクオリティを実現することを目指しました。「高級」ではなく、「上質」であるためにこだわったのが「素材」です。
金属、ガラス、木材、石という4つの素材でデザインモックを製作。建築家や設計者などにヒアリングを行った結果、出現比率が高く経年美化の要素もある金属に絞り込みました。
このような検討を経て、誕生したのが「EXTRA」シリーズです。
◇ABOUT PRODUCT◇
憧れの空間を実現する
格別な質感とディテールを実現した「EXTRA」
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「静かな存在感を持った本物の佇まい」をコンセプトとして掲げる、パナソニックの配線器具用プレート・ハンドルの最上位シリーズ。
切り出された無垢の金属板をイメージしたデザインで、バイブレーション仕上げによる表面の味わい深い風合い、閉塞鍛造加工によって実現した垂直に立ち上がるシャープエッジ、空間の美しさを際立たせる気品あるシルバー・ゴールド・ブラウンのカラー展開が特長。
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細部に宿る美しい意匠は、高い技術力の結晶
「EXTRA」シリーズのデザインのこだわりは大きく3つ。
「バイブレーション仕上げ」「シャープエッジ」「カラー展開」です。
これらのこだわりを実現するためには、技術開発そのものが必要だったと近藤は話します。
近藤:金属特有のギラギラした光の反射がありすぎたり、触ると指紋が残ってしまっては空間に調和しません。
そこで採用したのがバイブレーション仕上げ。ホテルのエレベーターの操作板や、ドアノブやキッチンカウンターなどでも使われる仕上げです。光の当たる角度によって多彩な表情を見せます。
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模様がワンパターンになりすぎない加工のさじ加減を何度も検証したそうです。
近藤:無垢板を表現するために、端面の仕上げにもこだわりました。厚みがしっかりあり、端面を職人さんがこだわって糸面加工したような、端正でシャープなディテールが必要です。しかし通常プレス加工だと端面がゆるく広がり、金属板を切り出した印象になりません。
そこで配線器具では初めてとなる「閉塞鍛造加工」という難易度の高い成形方法に挑戦。金型を閉じた状態で加圧する加工なのですが、高強度の金型、微細な圧力の調整など高い技術力が必要です。
試作段階では何度も金型が破損するなどしましたが、商品技術部門、協力会社さんの頑張りで実現することができました。デザインをいくら考えても実現しなければ意味がありませんので、開発メンバーの方々には本当に感謝しています。
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切りっぱなしの金属板を職人が一枚一枚手で削って加工したような、
端正な表情を実現しています。
近藤:カラーバリエーションについては、社外のインテリアコーディネーターの方と床・壁・天井に使われるマテリアルサンプルを集めながら、シルバー・ゴールド・ブラウンという王道のカラーバリエーションに絞り込みました。
シルバーは品のあるステンレスの雰囲気を出すために鈍い色合いに仕上げています。ゴールドはラグジュアリーな空間の装飾によく使われるシャンパン系・サテン系のインテリアに合う風合いに。
ブラウンは光のあたり具合で真っ黒に見えることもあるため、さまざまな光の下で上質感が感じられるニュアンスを探り、理想のブラウンに仕上げています。
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長く使われるものをデザインするということ
近藤をはじめとするプロジェクトチームのデザイン力と長年当社が培ってきた技術力の組み合わせにより実現できた「EXTRA」。
配線器具の別シリーズ「SO-STYLE」も担当した近藤は、「デザインとは、新しい“定番”を探すこと」だと語っています。
改めて、今回の「EXTRA」のデザインワークにどのような想いを込めたのか、聞いてみました。
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近藤:今回は素材にフォーカスして、新しい“定番”探しにチャレンジしました。ラグジュアリー空間には、床・壁・天井にさまざまなマテリアルが存在しています。配線器具もその中の一つの要素として存在できればいいな、という想いでデザインワークに向き合いました。
配線器具を始めとする電気設備は商品ライフサイクルが非常に長く、もしかすると自分が死んでからも世の中に存在しているかもしれない(笑)。
そう考えると、デザイン自体にも社会的責任がありますよね。
今後も、そういう視点を忘れずに普遍的なデザインを目指していきたいなと思います。
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