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若手従業員が中心となって作ったステートメント、そのプロセスを徹底解剖!

パナソニック株式会社エレクトリックワークス社(以下、EW社)が発表したステートメント。

前回は大瀧社長に、ステートメントを作った目的や効果についてお話を伺いました。

ステートメントのカギは、2030年にマネジメント層に位置づけられる「若手従業員の声」。しかし一体どのようにして、多様な意見を1つのステートメントに集約したのか、みなさん気になりませんか?

今回は、ステートメント策定会議に参加した若手従業員メンバー、そして経営企画メンバーにインタビュー!
どのようにステートメントが形作られていったのか、プロセスのウラガワをご紹介します。

経営企画:染井、唐澤 / 若手従業員:芝田、町田、竹本

社会の課題を、生活者の目線から!

当時、ステートメント策定のために年代、所属、DEI(Diversity,Equity& Inclusion)視点を考慮し集められたメンバーは経営企画のメンバーを含めて約10名。

そのうちの7名は、社内の様々な部署から集められた20~30代の若手従業員でした。

会社のスローガンを決めるともなると、もっと会社の偉い方々がたくさん関わってきそうなイメージがありますが…

EW社では、なぜ若手従業員を中心にしたのでしょう。

それは、EW社が2030年までの中長期的な計画を見据えて、ステートメントを設定したいと考えたからです。

2030年…その頃には会社内での重要なポジションを担い、会社の中心となることになるであろう世代の目線でステートメントを作ることが重要であるという狙いがあったのです。

最初の会議は、2021年11月。オンラインとオフラインのハイブリッドで実施されました。

そこでは、いきなりステートメントの内容について議論を始めるのではなく、まずは、それぞれが感じている社会課題が話し合われました。

当時会議のファシリテーターを務めた染井は、こう語ります。

 普段、皆さんが生活や職場で感じられていることを、素直に課題として出してほしかったため、あえて事前準備をしてもらわないようにして会議を始めました。

染井は中途入社の30代。若手とマネジメント層の間に位置しており、双方のコミュニケーションの橋渡しとして大きな役割を果たすことになりました。

参加者も、話しやすい環境だったので様々な意見を出せたと言います。

正直、最初は身構えていましたが、1人1人当てていただいて、とても話しやすかったです。話を否定せず、こういう意見もあるよねと肯定的に聞いてくださったのも良かったと思います。生活者の実感をうまく引き出してもらえました。

1時間ほどの会議で、脱炭素や自然災害、フードロスといった地球規模の大きな課題から、AIやIoT、ビッグデータといったテクノロジー関連の話題都市部への人口集中インフラの老朽化労働環境や介護育児といった身近な話まで…
EW社の事業に直接関係なさそうな事まで、様々な話題が飛び出ました。

次に、それぞれの課題に対して、EW社としてどう解決していきたいのかをディスカッション。

ここでも様々な意見が出されました。

EW社の従業員として何をしてみたいですか』と質問したのですが、電気設備の枠を超えて、僕らが想像する以上に幅広い話になりました
“こんなところでも貢献できるのではないか?”“こんな方向性ならお役に立てるかも!”と、色々な角度から意見をいただけたのがとても新鮮でした。

そして集まった課題や解決策を、メンバー全員で投票して、会社の事業として取り組んでいくべき領域を絞り込みました。

そこから、事業スローガンの3つの軸、「脱炭素社会」と「働き方改革(次世代の働き方)」「レジリエンス対策(災害への備え)」が導き出されます。

ドラフトを作成、経営幹部に報告

こうして出された課題と、EW社として行動すべきことを、経営企画のメンバーが文章にまとめ、それをドラフト(叩き台)として大瀧社長を含む経営幹部に報告します。

経営幹部からは、「もっとわかりやすい表現に」「国内目線だけじゃなくて、海外事業にも反映できるような文面に」という希望が出ましたが、大きな方向性として、若手従業員と経営幹部の考えにズレはなく、若手社員が自分ごととして社会課題を意識していることに感心されたそうです。

読みやすく“腹落ち感”のある文章に修正

12月に行われた2回目の会議では、経営幹部からの意見や要望も踏まえ、文章の細かい修正が行われました。

主に、「文章の分かりやすさ」と「腹落ち感があるか(社員視点・顧客視点)」の2点を中心に話し合われました。

例えば、ドラフトでは冒頭に「2020年初頭から始まった世界的なパンデミック」という一文がありました。

しかし、話し合いが行われた時期は、新型コロナウイルス自体がもはや当たり前になっていた時期であり、続く文章とのつながりも悪かったため、削除されることになりました。

また、「LED照明をはじめ、エネルギーマネジメントやセンシング技術で日々のエネルギーの節約を」という文章には、「もはやLEDは普及していて当たり前」「照明の制御や天井面を使ったサービスなどに変えた方が良いのでは」といった意見のほか、たくさんの意見が出され、次々とドラフトへ反映されていきました。

その反映度合いは、参加した若手従業員が「びっくりするほど、出した意見が次々と反映されていく!」と驚いてしまうほど。

読む人の視点から内容が再検討されるのと同時に、文章自体がより読みやすい、伝わりやすい言葉へと、どんどん修正されていきました。

当時のディスカッションイメージ

みんなで案を持ち寄って決定したステートメント

ステートメントの頭にあるキャッチコピーも、2回目の会議で大きく変更されました。最初のドラフトでは、「壁の中、天井裏から世界を変えよう」でしたが、壁の中や天井裏の仕事に直接的に携わっているのは、あくまで代理店様や電気工事会社様などであり、EW社としては、よりメーカー視点での表現が求められたのです。

一般の消費者の方にも刺さるコピーを決めるために、参加者が1人5つの案を出し、全員で投票。

上位のものの要素を組み合わせて生まれたコピーが、
いい今日と、いい未来を電気設備から。」です。

こうしてステートメントが完成!

発表されると、社内外から「具体的で分かりやすい」と肯定的な意見が多く寄せられました。

ストレートでシンプルな表現なので、街中で見かけてもスッと言葉が入ってくるような、そんなステートメントだと思います。これまでは「何をしている会社なの?」と聞かれたときに、すぐに回答出来ないこともありましたが、このステートメントがあるおかげで「電気設備をやっている会社だよ」と即答できるようになりました。

今後、自分が仕事で悩んだり課題を抱えたりした時、ステートメントはあるべき方向が言語化されているので、立ち返ることができると感じます。

他にも、
電気設備がいろんな人たちの当たり前を支えていると実感した
自社の存在意義を俯瞰して見ることができた
思っていた以上に、会社にできることがあると感じた

などの意見を聞くことができました。
新しく生まれたステートメントは、若手従業員にとって大きな意味を持つものとなったのです。

ステートメントを取りまとめた経営企画の唐澤は、当時を振り返りこう語ります。

こうして幅広い年代やDEI視点を考慮して、下意上達や上意下達をバランスよく組み合わせることにより、従業員の意見や思いをしっかり反映したものをまとめることができました。もちろん概念としては理解していたつもりでしたが、実際にやってみると実感する。だからこそ腹落ち感があるものができたと思います。

また、出来上がったステートメントを見て気づいたことがあったとか。

昨今、パナソニック含め各社『DEI』推進の動きが高まっています。
DEIによる企業価値向上の3要素として「多様性によるイノベーション」「多様な働き方の実現(働き方改革)」「リスク回避」というものがあるのですが、これらの要素が自然とステートメントの中に含まれていることに気づいたのです。
これも、従業員の意見を丁寧に集め、若手を含めて従業員自身がワクワクしながら取り組んだ結果だと感じています。

多くの人の多くの意見を集めて解決に導くこと。

まさに、パナソニックの創業者、松下幸之助の哲学である「衆知を集める」を実践して作られたステートメントです。

若手が中心となり、従業員みんなが納得できるように作り上げられたステートメントは、2030年の未来に向けて社員の心のよりどころとなり、
よりいい今日と、いい未来を描く羅針盤になっていくでしょう。