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エスコンフィールドHOKKAIDOが実現した、天地一体の新感覚演出!究極のエンターテインメント性のウラガワに迫る

今年はプロ野球が盛り上がりを見せていますね!みなさん、WBCは観戦しましたか?

野球と言えば、3月に開業したばかりの北海道日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールドHOKKAIDO、以下、エスコンフィールド)」も話題ですよね。

みなさん。野球場って、野球好きの方だけが行く場所だと思っていませんか?

エスコンフィールドが目指したのは「世界がまだ見ぬボールパーク」!なんだかとっても革新的ですよね。「ボールパーク」という言葉から連想されるように、野球だけではなく、その他のエンターテインメントも楽しめる場所になっているのです。

実際の設備を見てみると、世界初の球場内温泉・サウナ、フィールドが一望できるアジア初の球場内ホテルなど新しい観戦体験を楽しめる設備が盛りだくさん。

そんなエスコンフィールドの球場照明、もちろん一味も二味も違います!

今回、ファイターズが最高峰のエンターテインメントを実現していくパートナーとして、多くの導入実績を持つパナソニックとタッグを組み、これまでにない照明演出を実現しました。

ウラナレでは、今までもパナソニックが手掛けた新国立競技場や阪神甲子園球場をはじめとするスポーツ照明のウラガワを紹介してきました。

今回のエスコンフィールド編では、エンターテインメント性の追求と、アスリートファーストの両立をどのようにして実現したのか、そのウラガワに迫ります!


迫力満点!!フィールドライティング演出をご覧あれ!

百聞は一見に如かず、まずはエスコンフィールドの演出をご覧ください。

「音楽に合わせて巨大なスクリーンに映像が流れる」のは従来までの球場でもよくある演出ですが、なんといっても圧巻なのが照明による光の演出!

とくに、多くの人にとって初めて目にすると思われるのが、野球グラウンド上で動き回る光の演出です。

フィールド上を光がウェーブのように流れたり、ホームをグルグルと駆けまわったり、光が明るさや大きさを変えてフィールド上を自由自在に動き回ります。

さらに、天井付近では線状に配置されたライトが音楽や映像の盛り上がりにあわせてフラッシュのように瞬き、流れ星のように素早く移動。

球場全体で照明が一体感のあるエンターテインメントを提供し、観客を盛り上げてくれます。

エンターテインメント性VSアスリートファースト。立ちはだかる難関にパナソニックの技術で立ち向かう

とにかくダイナミックなエスコンフィールドの照明演出ですが、じつは完成までには多くの課題が山積みでした。

まず課題となったのが、エスコンフィールドならではの特殊形状です。
エスコンフィールドはバックスクリーン奥に高さ約70m、幅約180mの巨大なガラス壁があり、そのうえ屋根には開閉式を採用しています。

©H.N.F.

さらに観客席上部には世界最大級という超巨大ビジョンを左右2か所に配置。このため、「照明を設置できる場所がほとんどない」点が最初の難関であったと担当者の栗本雅之は語ります。

栗本:一般的な球場はスタジアムをとり囲むように500台以上の照明機器を取り付けますが、エスコンフィールドの構造ではガラス壁や開閉屋根には照明が取り付けられません。
そのうえ、ビジョン近くは照明を配置すると映像が見えにくくなります。このため、最終的な照明取り付け位置は内野側屋根に4か所、ガラス壁近くの2か所に限定されてしまいました。
この6か所に354台の照明を分散させ、限られた条件で広い球場全体を明るく照らし、さらに照明を使った演出も担えるようにする必要がありました。

国立競技場の内部。スタジアムを取り囲むように照明が設置されている。
エスコンフィールド内部。照明を設置できるスペースがかなり限られていることが分かる。

そこで、取り入れられたのが「スタジアムビーム」と「グラウンドビーム」と呼ばれる、354台の新しい競技照明投光器です。

両製品ともに光が拡散しすぎない挟角配光(狭い範囲を照らす明かりのこと)照明なのですが、その分遠くまでしっかり照らせるのが特徴。「スタジアムビーム」と「グラウンドビーム」の違いはkW数、つまり明るさが異なります。

栗本:エスコンフィールドでは一塁と三塁側に照明が配置できないので「遠くまで明るく照らす」必要がありました。
さらに野球は、陸上やサッカーなどに比べ照明の眩しさ抑制がかなりシビア。
というのも、ボールが小さく、フライなどで球が打ちあがることがあるためです。選手が球をしっかり確認できるように内野側には明るさを抑えた1kW相当の照明を配置しています。
いずれも狭い範囲ながら遠くまでしっかり照らすうえ、素早く調光できる反応速度の速さがあるので「グラウンドを照らす」という演出ができるのです。

テクノロジー×人の手による職人技。
最高峰の技術と経験で厳しい基準をクリア

しかし、ここでまたもう1つの課題が生まれてしまいます。

挟角配光の照明は1台だとスポットライトのように狭い範囲しか照らせません。このため「球場全体をムラなく明るく照らす」という条件が難しいのですが、これはパナソニック独自の「スポーツVR」で解決しています。

スポーツVRとは、照明の設置位置などを入力することで最適な照射角を計算するシミュレーション技術のことです。

スポーツVRで照明の角度をシミュレーションする様子

この説明だけを聞くと「パソコンに数字を入力すれば、あとは出力された数字通りに照明の角度をつけるだけ」と思われるかもしれません。
しかし、エスコンフィールドほどの巨大施設になると、設計と実際の設備にはズレが発生します。

照明の角度が1度ずれただけでも、照らされる先の地面の位置は数メートル変わってくるため、最終的に必要となるのが人の手による調整なのです。354台もの照明を正確に調整するのはかなりの難易度で、詳細設計から調整完了まで約1年半もの期間を要しました。

さらに、カメラに対しても厳しい照度基準をクリアする必要がありました。エスコンフィールドでは、高精度カメラでもしっかり撮影ができるように、照度と均斉度(ムラのなさ)の基準を設けており、照明の一部の明るさの基準を「法線照度」と呼ばれる数値で計算する必要がありました。

通常の照明設定ならば、球場の「A」という地点の明るさを設定するときに、前後左右から投射される光がミックスされた「空間照度」で割り出します。この考え方なら、一方からの照明の明るさが足りなくても、別の方向にある照明で明るさを補強することができます。

しかし、エスコンフィールドでは、カメラに対する「法線照度」の確保が要求されました。
法線照度とは「光源に対して垂直な面上の照度」のこと。わかりやすくいえば、カメラのレンズが向いた方向からの光源のみで照度を確保する必要があるのです。

じつは、スポーツVRで割り出せる照明の設定と、法線照度までを計算するソフトは別のもの。
このため、最終的に「選手のプレイを邪魔しない照明」「球場全体をムラなく明るく照らす」「カメラを意識した明るさとムラのなさの確保」をすべて実現するには、経験によるアナログ的な計算や人の手による調整が必要だったのです。

エスコンフィールドの照明には、実はファイターズの選手の知見も関わっています。スポーツVRでは競技の邪魔にならない照明になるようシミュレーションしますが、現場における、ファイターズの元プロ野球選手のヒヤリングも大いに活用されているのです。

栗本:シミュレーション当初はパナソニック社員野球経験者による想定データから照明の設定を計算していました。しかし今回、元プロ野球選手の視点が加わることで「プロならではの打球」にも対応できる照明になりました。エスコンフィールドの照明はファイターズの選手とパナソニック双方の知見や経験があったからこそ完成したともいえますね。

野球にレジャー、グルメと見どころの多いエスコンフィールドですが、今後はきっと多くの名試合や心に残るイベントが開催されるはず。

もしエスコンフィールドのイベントなどを観る機会があれば、ぜひ数々の困難を乗り越えて完成した「照明」にも注目してみてくださいね!


💡パナソニックの照明演出については是非、下記記事もcheck!

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